五拾画廊 浮世絵コレクション!|fifty-gallery

開廊時間11:00~19:00 休廊:日・月・祝日 Open 11:00 to 19:00 Closed SUN, MON, National holiday

※留守番電話でご対応させていただく場合がございます。お名前、ご連絡先、ご用件をお願いいたします。

古美術や浮世絵、絵画、美術関連のコラム

Home > Column > たかが紙一枚、されど紙一枚 / 第五回

たかが紙一枚、されど紙一枚 / 第五回

2017年2月2日  


 

〜 浮世絵の広大な裾野、明治版画の世界 〜

文と構成:吉 いと子


 

侮るなかれ、明治版画の魅力

江戸時代に最盛期を迎えた浮世絵≒版画の世界。どうやら巷では、その美術的価値やデザインとしての斬新さに、再び熱い視線が集まっているご様子。各地で次々展覧会が催されるなど、この現代においても尚、江戸の浮世絵がやんややんやともてはやされております。どの時代にあっても、作り手の「本気」は人々の心を打つというなによりの事実。

そんな中、なんとな〜くスルーされがちなのが明治版画。

前回の記事でも触れたのですが、時代の波に飲まれ、なんとな〜くやさぐれざるをえなかった明治版画の微妙な立ち位置は、若干、気の毒ですらあります。美術だのデザインだのに粋を尽くすという絵師、彫り師、刷り師、版元の情熱に陰りが見え、おかしな方向に舵を切った版画も数知れず、ではあります。

いやしかし、侮るなかれ、明治版画。明治初期には短期間ながら錦絵新聞なるものが発行され、写真には及ばぬイマジネーションと創意工夫の最先端メディアを担っておったのです。また、ショッキングピンクや鮮やかな赤、どぎついほどの紫などのポップな色使い、従来よりも戯画化された漫画の原点を見るような絵柄はいたって現代的。案外親しみを持つ方も少なくはないのではないでしょうか。

今回はそんな明治版画の中から、いくつかのジャンルをご紹介しましょう。

国会もの
IMG_2070
歌川国輝「帝国議会衆議院銘鑑」明治23年(1890)

これぞ、江戸にはない!決定的明治版画と言えるのではないでしょうか。なにしろ、江戸時代にはまだ「国会」は無かったのですから。

ずらり、当代の政治家さんたちが錦絵化されております。赤、青、黄色のどぎついほどの色味が特徴ですが、根本的には日本画の配色を踏襲しており、かつての錦絵の描きこまれた女性たちの着物の柄の代わりに絨毯の柄を描きこんであります。黄色い文字の枠の部分には、実在の政治家たちの名前がずらりと並び、その歴史的価値にも興味をそそられます。

ちょっと面白いのが、今では即座にクレームがきちゃいそうだけれど、取材せずにイメージ先行で描いちゃった絵も多いらしい、ということ。色味や服装、顔に至るまで正確とは限らない…けれど新聞になってしまうあたり。なんだか牧歌的な風情があります。

史実の資料と照らし合わせて改めてみてみると、あれこれツッコミどころも発見もありそうな…。お手元に一枚あれば、長〜く楽しめる作品とも言えます。

おもちゃ絵

江戸時代に発祥した「玩具絵(おもちゃえ)」は一つのジャンルとして既に確立されていたものですが、特に明治の玩具絵は明治版画ならではのキッチュな色合いとキュートな柄がマッチして、今見てもキュンとします。

子供向けの絵や図鑑、メンコ、すごろく、福笑いなどが制作されたそうです。ここに掲載した五拾画廊所蔵の「玩具絵」は、一体どのような用途に使うものだと思いますか?

IMG_2077 (1)

IMG_2085

IMG_2089

IMG_2093
歌川芳藤「志ん板冬物いせう」明治12年(1879)

形的にも、一目ではわかりづらい玩具絵。とにかく切り抜いて組み合わせるもの、というイメージはできます。厚紙とかで裏打ちして箱のようなものを作ったのかな?と私は想像しておりました…が、すっかり降参したところで我が店主、正解を教えてくれました。

なんと正解は、姉様人形の着せ替え用の着物、だったのです!なんて贅沢なお着物!

猫、ネズミ、カエル、軽業をする子供?…この柄のならび。当時の人も「カワイイ!」って黄色い声を上げたにちがいありません。今見ても、一瞬用途はよくわからない、だけど、カワイイ。

英字
IMG_2081
月岡芳年「見立多以尽 洋行がしたい」明治11年(1878)

この時代に特徴的なのが、盛んに浮世絵に「英語」が登場するところ。
上の作品は、英語の本を読む若い女性。どうやら、留学に思いを馳せている様子。時代の流れで、女子も女学校などで英語を習ったりすることがメジャーになったのがよくわかります。文明開化の薫り。着ているものも普通の着物をアレンジしていてハイカラです。下に着ている赤いチェックはなんとネルシャツ!!当時の流行だったそうです。おしゃれさんですね。

IMG_2097
小林清親「東京小梅曳舟夜図」明治9年(1876)

なんと、タイトルなどを英字表記している作品も。

こちらの小林清親の作品は、構図もどことなく西洋風。それまでの日本にはなかった、「光線画」と名付けられた陰影の表現が見事な作家です。
「教育いろは談語」という連作の中で英語ブームを揶揄した作品も残している清親ですが、英語はやっぱり、当時の最先端だったのでしょうね。

さて、次回は、いよいよ稀代の浮世絵師、月岡芳年を特集しようと思います。お楽しみに!

 

吉 いと子 (五拾画廊たまに手伝い、フリーライター)

☆五拾画廊ホームページ連載「たかが紙一枚、されど紙一枚」では、皆さまからの浮世絵にまつわるご意見、ご要望、ご質問をメールで受け付けております。皆様からのお声はしっかり記事に反映させております(実は)。お便りをいただいた方の中から、厳正な抽選の上、特製「春画ポストカード」をプレゼント!お便りの宛先はこちら。→info@fifty-gallery.com

※件名欄に「されど紙一枚お便り係」、と記載の上、本文にご意見もしくは質問、ご要望、そして、お名前、おところを明記下さいませ。(個人情報は景品の発送にのみ使用いたします)

 

<お知らせ>

お客様からのお声を頂いて、今回より当連載に登場する作品の詳細を、一部ホームページ上にアップすることにいたしました。是非ご高覧ください。

歌川国輝「帝国議会衆議院銘鑑」明治23年(1890)

歌川芳藤「志ん板冬物いせう」明治12年(1879)

ねずみ

カエル

軽業師

月岡芳年「見立多以尽 洋行がしたい」明治11年(1878)